2016.3.24 東京都目黒区
「路地をとりこみ街とつながる」
特異点の評価
漠然と街並みを眺めていると、一見同じような区画が反復しているようにも見えるが、よく観察してみると区画された敷地に全く同じ条件のものはなく、それぞれが特徴をもった特異点であることに気づく。しかし街並みを構成する住宅の多くは、敷地を周囲から独立した場所として考え、方位や面積、法規制といった定量的条件で評価することが多いため、画一的な街並みになってしまっている。
街とつながる
計画敷地は建て込んだ住宅地の中ではあったが、分かりやすい特異点があった。
それは東側隣地は長屋の引き込み道路となっていて巾2.5mの空地が確保されていた。接道側には正面に路地が接続され、視線が遠くまで抜けていたことである。
また、その路地は巾が狭く程よいスケールであったため、そのまま延長するように敷地の南北方向の奥行きを利用して巾約1.5mの「ホール」と名付けた立体的な移動空間をつくり、計画に取り込もうと考えた。
寝室やリビング・ダイニングといった居住スペースと外部環境とのバッファゾーンとしても機能していて、南北に風が抜け、東側に向き合う住宅の視線を制御しながら、明るく居心地のよい場所になっている。
居住スペース側の壁は意図的に厚くし、出入口というよりは大きな開口部を設けて外壁と同等な境界面として意識させることで、ホールが少しだけ特別な場所になるよう留意した。
書斎やピアノ、図書コーナー、洗面、テラスまでも組み込まれ、壁は質感のある外部用左官材、床にはタイルを用いて、室内でありながらより路地に近い関係となるよう仕上げを選択している。
ホールは日常生活を彩る様々な行為を受け止め、移動空間と重ね合わされることで、街に接続された立体路地のようになった。寝室から繋がる縁側のようであり、子どもたちが動き回る明るいテラスでもあり、洗濯物を干す場所や街を見通す展望台にもなるような、暮らしと街が重なる場所である。
気がついたら家族が皆ここで思い思いの時間を過ごし、その様子を道ゆく人がぼんやりと眺めているような風景が、この街並みに生まれたらと願っている。
※新建築住宅特集2016年04月号より抜粋 この記事にコメントする
特異点の評価
漠然と街並みを眺めていると、一見同じような区画が反復しているようにも見えるが、よく観察してみると区画された敷地に全く同じ条件のものはなく、それぞれが特徴をもった特異点であることに気づく。しかし街並みを構成する住宅の多くは、敷地を周囲から独立した場所として考え、方位や面積、法規制といった定量的条件で評価することが多いため、画一的な街並みになってしまっている。
街とつながる
計画敷地は建て込んだ住宅地の中ではあったが、分かりやすい特異点があった。
それは東側隣地は長屋の引き込み道路となっていて巾2.5mの空地が確保されていた。接道側には正面に路地が接続され、視線が遠くまで抜けていたことである。
また、その路地は巾が狭く程よいスケールであったため、そのまま延長するように敷地の南北方向の奥行きを利用して巾約1.5mの「ホール」と名付けた立体的な移動空間をつくり、計画に取り込もうと考えた。
寝室やリビング・ダイニングといった居住スペースと外部環境とのバッファゾーンとしても機能していて、南北に風が抜け、東側に向き合う住宅の視線を制御しながら、明るく居心地のよい場所になっている。
居住スペース側の壁は意図的に厚くし、出入口というよりは大きな開口部を設けて外壁と同等な境界面として意識させることで、ホールが少しだけ特別な場所になるよう留意した。
書斎やピアノ、図書コーナー、洗面、テラスまでも組み込まれ、壁は質感のある外部用左官材、床にはタイルを用いて、室内でありながらより路地に近い関係となるよう仕上げを選択している。
ホールは日常生活を彩る様々な行為を受け止め、移動空間と重ね合わされることで、街に接続された立体路地のようになった。寝室から繋がる縁側のようであり、子どもたちが動き回る明るいテラスでもあり、洗濯物を干す場所や街を見通す展望台にもなるような、暮らしと街が重なる場所である。
気がついたら家族が皆ここで思い思いの時間を過ごし、その様子を道ゆく人がぼんやりと眺めているような風景が、この街並みに生まれたらと願っている。
※新建築住宅特集2016年04月号より抜粋 この記事にコメントする
設計・監理
川辺直哉建築設計事務所 担当/西岡諒 森詩央里
構造設計
多田脩二構造設計事務所
用途
戸建て住宅
敷地面積
88.59㎡
建築面積
51.45㎡
延床面積
87.25㎡
構造
木造
規模
地上2階
工期
2014.12〜2015.05
施工
礎コラム
植栽計画
タカ・グリーン・フィールズ
家具
タンペレ
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