用途の可変を想定した小規模複合施設（初期は賃貸＋ホテル＋カフェ＋スタジオ）。外部と繋がる露地のような共用部を内包し各区画（用途）が接続されている。複合用途により専有部の領域を越えた関係が生まれ利用者の活動が施設から街へと広がる。未来に繋げる器として社会情勢の変化に対応しながら、地域や次世代へ寄与していくことを目指した。

「未来に繋げる器」
事業主は代々続く地主であり、本計画は既存賃貸施設の建替えでの初事業である。地域に根差した小規模施設が大手開発に対抗し継続していく為にも、社会情勢による用途転用がし易い状態をつくり、地域や次世代に寄与していくことを目指した。　　　　　
用途転用し易くするため複数の専有面積区画を設定し、界壁の一部開口による隣接区画のSOHO一体利用、地上階テナント区画は壁量を絞り美容室や店舗への転用を想定した。仕様はハイクラスとスタンダードの間を狙いシンプルにまとめ、物理的セキュリティは階ごとに設定・移動可能なEVロックと門扉を併用した。

「街に開かれた露地のような共用部に利用者の活動が広がり、公共用途が複合したハイブリッドな住処」
露地のような共用部を介し用途複合することで、決して大きくはない専有面積区画の領域を超えて、施設全体から街へと活動や意識的領域が拡張できると考えた。旅行者にとっては滞在拠点となることや、地域住民との自然発生的な交流が促進される場となることを意識した。
共用部を凹凸させ滞留スペースを作り露地の庭園のように仕立てた。地上階テナント区画はカフェ兼ホテルロビーとし、トップライトで繋がる上階は多人数利用席とワークショップや各種製作スタジオを兼ねた。利用者はカフェをロビーやダイニング、スタジオを趣味室に見立て、共用部・屋上テラスを庭や公園のように利用し街と繋がる。

「自然素材や手仕事を活かした日本的空間・質感の内外装と、利便性を考慮したIoT装備の両立」
事業主の長い海外赴任経験から、遅れている日本のIT環境整備に対し、施設単位での実用的なloT導入が必要と考えた。また賃貸やリノベーション物件の流行りである無機質でラフな空間デザインに対し、本質的な日本的空間体験の提供と上記利便性の両立が本施設の特徴に繋がると考えた。
杉板型枠や天然貝石、障子等、シンプルな空間に素材感のある仕上げや日本的設えを導入しつつ、フリーWi-Fiやスマートロック、IPカメラを装備し、居住・防犯性の向上と管理し易い状態を付加価値とした。 この記事にコメントする